猛暑!!


 もらったばかりのボーナスでクーラーを買おうと思い、私はデパートへと出かけた。外はカンカン照り。目眩がしそうな暑さだ。デパートに一歩入ると、さすが冷房がよく効いている。大勢の人でごった返しているにもかかわらず、すぐにヒンヤリとした空気に包まれた。ふう、やっと生き返った気分だ。

 ハンカチで汗をぬぐい、さて、家電売り場へ向かおうとしたその時。
「アノー、ちょっとスミマセン」
振り向くと、異様な風体をした男が一人、立っていた。黒い髪に黒い目、だけど、顔立ちは日本人じゃない。かと言って、どの人種とも言えないような、妙に異質な感じのする顔。一番異様なのは、その服装だ。いくら昨今のファッションが多種多様だとしても、見たこともない、変な格好をしている。
「おききしたいのデスガ、イマは西暦何ネンデスカ?」
「は?」……今、この男は何と言ったのだ? 言葉づかいもなんだか変だった。
「実はワタシ、2803ネンから着いたばかりで、イマがいつか、マダわからなくって……それで、イマは、イッタイいつなんですか?」
「……2005年ですが……」
この人、いったい、何だろう。。。2803年?……バカな……!
「2005ネン! ヤッタ! じゃ、じゃあ、私はホントウニ、たいむ・とらべるに成功シタンダ!! ばんざい!!」
男は一人、狂喜乱舞といった様子である。私はますますあっけにとられた。
「で、ココは、どこナンデスカ?」
「どこって……日本、ですけど……」
「ニッポン! オオ、素晴らしい! ではアナタは、純血種の日本人デスネ? オオ、スバラシイっ!!」
男は私の手を取って振り回した。
「……あのー、……」
私が困惑しているのを見て、男は私の手を離して言った。
「オオ、コレハ失礼。ワタシ、純血種の日本人に、会ったのハジメテなものですから……」
「いえ、……それより、あなた、本当に、未来から来られたんですか?」
「エエ、本当デストモ! ワタシ、長い間、たいむ・ましんの研究、してました。目的があったんです。ワタシ、自然と触れ合うタメ、ココニ来ました。私たちの時代、もう自然はドコニモ残ってイナイ。ショクブツ、動物、全て、ニンゲンの手で、人工的に育てられる。ワタシ、記録によって、ソレラのものが自然のママノ状態だったトキガアッタコト、知りました。ワタシは、地球の大自然トイウモノガ、どんなふうダッタノカ、知りたいノデス。過去のキロクによると、トテモスバラシイ、のだそうですね。でも、ココハ……」
男は周りを見回した。
「人工物の中デスネ。ドコにゆけば、自然とフレアエますか?」
「えーと、自然、自然ねぇ……。完全な自然というわけじゃないけれど……デパートを出て東に少し行けば、確か公園があったはずですが。そこで良かったら、行ってみてはいかがです? よくは判らないけど、あなた方の時代に比べたら、自然に近い状態だと思いますよ」
男は困った顔をした。
「でぱーとッテ、ナンデスカ? ……こうえん……?」
正直言って、私は半信半疑だった。でも、好奇心をくすぐられて、この自称未来人さんを公園へ連れて行ってあげようと思った。

 ところが。デパートから一歩外に出たとたん。
「ぎゃあぁ〜〜〜〜っ!!」
一声、すさまじい絶叫を上げたかと思うと、男はバッタリ倒れて動かなくなった。いったい、どうしたというんだろう。たちまち人だかりがしてくる。
「どうなさいました?」
一人の上品な白髪の紳士が、近づいてきた。
「私は医者です。とにかく、その人を中へ……」


「死んでますな……」
「へ?」
「完全に、事切れています。いったい、どうしたんですか、この方……」
「どうって……別に、何も……」
あまりのことに、私は言葉も出ない。全く、突然現れて突然死んでしまうなんて。いったいどういう神経してるんだ、この男。
「死因は、何なんですか?」
「それが、どうも信じられないんですが……全身やけど、なんですよ。呼吸器の中まで焼けただれてます。あなたのお話によると、この方は戸口を出るまでは何ともなかった、ということでしたね?」
「ええ、ピンピンしてましたわ」
「おかしいですねぇ、そういう状況で、こんな状態になるはずがないんですがねぇ……これじゃまるで、500度以上の熱風を吹きつけられたような……」
医者はしきりと首をひねって考え込んでいる。けれど私は、その言葉で納得した。
 ああ、そうか。この人はやっぱり正真正銘の未来人だったんだわ。人工的に調節された環境に慣れきってしまった体には、自然のままの夏の暑さは過酷すぎたんだ。

 私はクーラーを買うのを少しためらった。けれども、結局、買うことにした。私一人ががまんしてみたところで、人類全体の体質に影響があるとは思えない。暑い思いをするだけ、無駄というものだ。どんな危機感が叫ばれようとも、人は、やはり楽な方へと流れていくのだから。

-Fin-
-あとがき-
これ書いたのって2005年じゃなくて実はもっと昔……ええ、もう思い出せないほど(^^;)
ところで人間が何度ぐらいの熱風で即死するものなのか、本当はちゃんと調べてから書きたかったのですが、その気力なし。。。ということで(こらっ!(^^;))500℃っていうのは、いい加減ですのでその点、ご了承くださいm(_ _)m

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